ブレイクスルー思考とは
ブレイクスルー思考とは?
この2人は1990年に『新ブレイクスルー思考』を共著で発表した(当時)南カリフォルニア大学のナドラー教授と中京大学の日比野教授です。
ナドラー教授は長年IBMのコンサルタントを務める傍ら全米IE協会の会長などもしており、1960年代には来日し早大で半年間ブレイクスルー思考の前身であるワークデザインの講義をしました。それ以来日本ではワークデザインの名が日本でも広く知られています。またこれを契機として、日本の名だたる企業や各地の大学にも広く普及し活用されるようになりました。
そのため現在でもワークデザインの名でこれを活用している場合もありますが、1980年代には共同研究者として加わった日比野教授とともにワークデザインをさらに進化させブレイクスルー思考として発表しました。
1950年ごろのワークデザインは文字通りワーク(作業)のデザイン(設計)として、主に製造現場の製造システムの設計で使用されていました。その当時はものづくり全盛(工業化時代)ですから、目的とは呼ばず(物の)機能(ファンクション)と呼んでいました(今でもファンクションと呼ぶ人もいます)
その後、時代は工業経済社会からサービス経済社会へと進展し世の中の関心もモノからサービスの担い手・受け手である人間となっていきました、そのためワークデザインも、モノの持つ普遍的な機能・一般解ではなく、人間の持つ目的、それもその時その場のその人のための特定解を創造するものと変化していきました。これは研究に日比野博士が加わったことによる影響が大きいものと推察されます。
下の図はブレイクスルー思考の、基本モデルです。
円周に配置してあるのが、ブレイクスルー思考における3つの基礎原則です。これらは常に思考の場で適用されていきます。
『ユニークさ』とは、すべての状況はユニークな違いがあるということです。早くから人間と人間社会の多様性(ダイバーシティ)を尊重する思考となっています。
『目的情報の原則』とは、最初から情報収集にH知るのではなく、思考を進めるに当たって必要最小限の情報を収集するということです。これにより思考や行動の生産性が向上します。
『システムの原則』すべてのモノ・ことをシステムであると認識することです。認知の枠組みを変えること(パラダイムシフト)で異なる世界が広がり異なる解決策が見えてきます。
円の中心が思考のプロセスを表現しこれは後述されます。
矢印はらせん状に上昇回転し続けていくことにも注目してください。
すべてのものは変化の中にあり静止状態ではありません。ブレイクスルー思考は常に最新再生・継続変革していく思考です。
ブレイクスルー思考の本質とは?
ブレイクスルー思考には様々な側面や特徴があるので、一言で表現するべきではありませんが、通常の思考との比較のなかであえて表現すれば『人間の目的を本質としてそれを達成するための思考』と言えます。
その根拠はブレイクスルー思考では、すべてのモノゴトをシステムとして認識することに由来します(システム観) システムとは、ここでは単純に、ある目的のため様々な要素が関連しあって1つの全体を構成しているものと定義します。
ですからあらゆるものはシステムを構成Hし、そこには必ずシステム自体の存在目的があり、それがそのシステムの本質と定義します。また様々な要素のなかには、関連する人間やモノ・こと・情報・制度・・・・あらゆるものが含まれます。
そのためブレイクスルー思考では、まずシステムの目的を明らかにし、次にそのシステムが目指しているものの実現形(あるべき姿=未来解)を明確化します。最後にそれを現実世界で実現する方法・手段として生解=実現システムを構築します(通常の思考では、事実・真実を本質・根拠としてそこから思考を始めるため、導き出されるものもまた真理・真実であることが求められます)
ブレイクスルー思考は、学校では学ばなかった思考様式であり、人間社会の多様性に対応し、実生活でもビジネスにおいても未来を築くための思考です。
過去や現実にとらわれずに思考を進め、これまで解決できなかった様々な問題を解決してきました。
過去や現実の情報を集めて分析するのではなく、はじめから求める未来を創造しそれを実現するシステムを構築する思考です。
図の中央のモデルがその思考プロセスを表したもので、以下でその解説をいたします(右側の一般的な問題解決モデルと思考プロセスを比較してみてください)
私たちが最終的に目指しているのは、人々がこの両方の思考を脳内にインストールして使い分けられるようになることです。
人間中心に考えよう。
ブレイクスルー思考は人間中心の思考であると言えます。 それはブレイクスルー思考は人間の目的を実現するための思考であり、この点がワークデザイン初期のモノ中心の思考とは完全に異なります。
当時はIEという言葉の通り、世の中は工業生産時代でありモノづくりのためのワークのデザインでした。
90年代になるとモノから人の時代となり、この思考もモノの機能(ファンクション)から、そのモノゴトと向き合う人間の目的を中心に据える様になりました。
思考を進めていくうえで、まず最初に考えなければいけないことは、この思考の対象となるシステムの関係者は誰かということです。
ブレイクスルー思考はあくまで目的が達成されることに焦点を当てていますので、最初からこのシステムの関係者は誰で、実行のためには誰にいつ参画してもらうのか、誰をどの段階で参画させると具合が悪いのかまでを見極めていきます。
それはブレイクスルー思考では、すべてをシステムと認識しますので解決策も関係者もそれぞれ1つのシステムを構成しています。
したがって求める解決策システムと人間も含めた他のシステムとのつながりをきちんと構成しておかないと実行が妨げられることになるからです。
もう一つの人間フェーズで重要なことは、目的を考える時の場の設定です。状況設定と言ってもよいでしょう。
その中心は『いつ・どこ・誰』です。中でも関係者のうち誰の目的を考えるのか?または考えるべきか?が最も重要です。
通常は当事者がそこに参画していますが、そうでない場合は特に注意が必要です。例えば、研修を企画する場合に、その目的として受講者の視点か、主催者の視点か、講師の視点で考えるべきか?またそれは3年後の話か、3か月後の話か?東京のある企業でのことか、ニューヨークのある学校のことか・・・などで全く異なってきます。 図の2台の自動車は、ある自動車販売店に行って『車を買いたい』と伝えたときに、『それではこのバスはいかがでしょう?』と勧められたら通常は2度とそこにいかないでしょう・・ということを表しています。場を適切に設定していないことから生じる間違いはよく見られることです。
このようにブレイクスルー思考は多様なステージの中でのある状況の特定解を求める思考となり、どこにでも通用する一般解を求めるものではありません。また現代のように多様性が重視される時代に、本来一般解・共通解などはほとんど役に立たないものと考えています。
目的ってどう考えるの?
皆さんは、『それ一体何のためなの?』と問われたら、一瞬戸惑いがあるのではないでしょうか?また、会社などで上司に『それ、一体何のためにやるんですか?』などと面と向かって聞くことははばかられのではないですか?人が何か行動する時にはエネルギーや時間を投入する必要がありこれはお金を使うことと同じことになるが、不思議なことに私たちは明確に目的を考えずに時間を使い行動していることが多い。
一般に仕事は本来手段であって目的ではない。目的を理解していない仕事は単なる作業と化してしまう。そこには仕事を通して達成する目的や夢、またやりがいなどは感じられないだろう。
ブレイクスルー思考では、目的をその行動の意図として位置づけ、図のように『A を、B する』と表現し、Aには目的語たる名詞が入り、Bにはそれにある動作を働きかける意味で動詞を当てはめる。
このように最初は目的を表現する時はできるだけ他の修飾語を加えずに目的そのものを表現していく。
すなわち自分の行動の意図を明確化することから始める。目的がないまたは不明の仕事には取り組まないというのが原則のはずだが、企業内にはすでに目的が失われた仕事がごろごろしている。
図に記載したいくつかのことは、目的を考える上での留意点だ。
次にブレイクスルー思考の最大の特徴は、一度思いついた目的ですぐに行動をとるのではなく、その目的を達成するのは何ためかを考えていくことだ。
言って見れば『目的の目的を考える』ことになり、これを『目的展開』と呼んでいる。これを突き詰めていくと自分が考えもしなかった新たな、より大きな目的を発見することが多い。これは目的がそれを有すあるシステムの存在意義であり、システムは必ず重層的な構造になっているがゆえになせる業である。そこで新たに発見した目的で行動(仕事)をすることで新たな価値を創造したり、他社(者)に質的な差別化をはかることもできる。 これはブレイクスルー思考により、眼前にあるモノゴトからその目的へと視点を変えたことにより、現実の制約から解放され創造の世界へと導いてくれたと言えます。
あるべき姿/ビジョン創造法
変化の激しい現代において『過去の延長線上に未来はない』 過去や現実にとらわれず未来から学ぶあるべき姿を考えよう
【未来解フェーズ】
通常の思考でも未来への願望やビジョンとして【ありたい姿】や【なりたい姿】をイメージすることはあるでしょう。
イラストではカエルがジャンプしていますが、現実からスタートして思考をしている限りでは、せいぜいカエルのジャンプ=改善がやっとでしょう。
しかし変革やイノベーションを起こそうとするなら、現状を突破(ブレイクスルー)し、現状に束縛されない未来を創造しその姿を見なければなりません。
ブレイクスルー思考ではそれを、ひらめきや直感などの単なる思い付き願望としてではなく、思考のプロセスを踏むことで構造的に見えてくる理想状態として『あるべき姿』と呼んでいます。
これまでの思考で明らかになったその人の目的や価値観が満たされた状態を『べき』で表現し、誰でもブレイクスルー思考の思考手順を踏めば、あるべき姿にたどり着くことができることを表現しています。
現代のような激動・激変そして混迷の時代には、過去の延長線上を歩むことは非常にリスキーであり、そこに求める未来は見出すことは困難でしょう。
しかし誰かがリーダーとなりその方向性を示す必要があります。
あなたがブレイクスルー思考をインストールすれば、方向を見失っている周囲の人に未来やビジョンを明確に見せることができます。
ミケランジェロが大理石の中に彫りだすキリストを明確に見ていたように、私たちはイメージできないもの・見えないものは実現ができません。
その時あなたは真のリーダーとして未来への道を切り開き理想を実現できるようになります。
こうしてブレイクスルー思考は、これまで様々な新商品・新サービス・新たなビジネスモデルなどを開発し、様々な解決不能な問題に解決策を与えてきたのです。
実行にはシステムが必要
【生解フェーズ】
通常の思考では、思考の守備範囲はあくまで『考えること』に限定されています。
しかしブレイクスルー思考はあくまで実現・実行そして成果の創出をゴールとしておりますので未来を眺めただけでは終わりません。
実行(Execution)こそが最も重要であり、ブレイクスルー思考はここに向かって進んでいきます。
『システム観』を思い出してください。すべてのものをシステムと認識するなら解決策もシステムでなければなりません。
ですからブレイクスルー思考では、解決策としてのシステムを設計し構築するところまでを一連の流れとしてとらえています。
またこのシステムは静止画ではなく動画として、まさに今生きている解決策システムとして構築します。
そのためこの最終ステージは『生解(Living Solution)』と呼ばれています。
左側のホッパー図をご覧ください。
出力は実現されたあるべき姿であり、入力はその逆状態です。
入力を室力に変換するために必要な処理の流れがこのシステムの中心を占めます。
ここはまさにシステム設計(システムデザイン)と呼ばれるもので、ここではロジカルにもれなくダブりなくMECEに組み立てます。
このシステムの要素でその核となるのが目的(価値観含む)ですが、その他の要素として変換の媒体としての、人間・モノ・情報・・またこのシステムを取り巻く環境なども考えていきます。
目的・入力・出力・処理・人間・モノ・情報・環境の8つをシステムの8要素と呼びこれをシステムの基本モデル(システムモデル)とします。
しかもブレイクスルー思考では、更にそのシステムを様々な切り口で次元展開していきます(図の右側システムマトリクス)
周囲に存在する別のシステムには阻害システムもあれば相乗効果を生み出すようなものも存在しています。
また先ほど触れたようにこの生きものとしてのシステムは将来どこかで変化していかなければなりませんので、将来次元に『変化の種』を組み込んでいく必要があります。
そしてシステムの管理次元では実行の保証を組み込まなければなりません。
これらの様々な次元対応を見せてくれるのがシステムマトリクスという思考ツールで、これらを基本システムのサブシステムとして設計し組み込んでいきます。